歯科衛生士の筆者だけでなく歯磨きや歯科医院への治療に対して面倒な方が多いと思います。では、もし虫歯や歯周病が悪化してしまった後のことは考えたことはあるでしょうか?
結論を申し上げますと、歯を失うだけでなく全身にも影響があるということをお伝えしたいのです。
今回は、虫歯や歯周病を放置した後に起こるメカニズムをご説明します。
そこで皆さんの中で、虫歯が歯の神経まで大きくなるまで進んでしまい、寝ても覚めても激痛だったのが、ある日突然あんなに歯が痛かったのが噓のように歯の痛みがなくなってしまって
「ひゃっほ~!!歯が痛くない。ラッキ~!」
と虫歯が治ったかの様な錯覚を感じたことはございませんか?
実は......筆者も経験しました。
しかし指で虫歯の歯を触ってみますと、虫歯が治っているどころか歯の大部分は崩壊していて歯の根っこだけになっています。
でも痛くありませんから、歯科医院で勤め始めるまでそのまま虫歯を放置していました。
人間は死んでしまうと心臓や呼吸も止まってしまってだんだん身体が腐敗していくのですが、歯の神経も同じで、神経が生きている時は冷たい物や熱い物を食べた時に知覚過敏の歯や虫歯のある方は歯がしみたり痛くなったりします。しかし歯の神経が死んでしまったら、歯が死んだミイラ状態になるので、痛みが何も感じられなくなるのです。
歯がミイラ状態になっても、歯の痛みがなくなったんだからいいのではないか?何か問題があるの?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、虫歯や歯周病放置によって人間の身体への二次感染を引き起こします。
ある病気の元のなる原因によって (原病巣といいます) 遠隔の臓器にも障害が起こる二次疾患を起こす病態を病巣感染と言います。
その原病巣で一番多いのが下の百分率で表したように口腔内に関与しています①扁桃腺感染より起こるもの・②歯の感染により起こるものこの2つです。
①扁桃腺感染より起こるもの 症例336 百分率63.3%
②歯の感染より起こるもの 症例136 百分率22.0%
③泌尿器の感染より起こるもの 症例 24 百分率 4.0%
④子宮および卵管の感染より起こるもの 症例 12 百分率 2.0%
⑤副鼻腔の感染より起こるもの 症例 12 百分率 2.0%
⑥気管の感染より起こるもの 症例 6 百分率 1.0%
⑦胆嚢の感染より起こるもの 症例 3 百分率 0.5%
⑧腸の感染より起こるもの 症例 2 百分率 0.4%
⑨虫垂の感染より起こるもの 症例 1 百分率 0.2%
⑩中耳の感染より起こるもの 症例 1 百分率 0.2%
扁桃腺は、お口を開けましたら丸見えのところですので、感染しやすいところではあります。扁桃腺感染は、「A群B溶血性連鎖球菌」いわゆるお子さんがいらっしゃるご家庭はご存じだと思いますが、溶連菌は扁桃腺から感染して二次感染で身体の臓器にも影響を及ぼすことになります。
ごくまれに溶連菌の感染を何度も引き起こすとリウマチと同じ症状を引き起こすことがあります。
溶連菌を予防するためには、基本ではありますが栄養・休養をしっかり行っていただくのと、口腔ケアが重要になってきます。
そして
歯の感染によりおこるものはどのようなメカニズムなのでしょうか?
下の図をご覧ください。
歯の断面図ですが、真ん中の青い所が歯の神経で、「歯周炎からの経路」の矢印の隙間が歯周病で出来た歯周ポケットです。
図をみていただくと、歯の神経と歯周ポケットは血管とつながっていることがお分かりいただけると思います。
虫歯や歯周病から発生した細菌が、血液を介して身体中まで運ばれて臓器の二次疾患を引き起こします。
病巣感染だけが原因で病気を引き起こすわけではないですが、原因の一つにもなることをご理解いただきたいと思います。
さて、虫歯や歯周病の細菌達が血液を介してどんな疾患を引き起こすのかご参考までに書かせていただきます。
①糸球体腎炎
②リウマチ熱
③リウマチ性関節炎
④心内膜炎
⑤心筋炎
⑥神経炎
⑦皮膚炎
などがあります。
他にも疾患はあるかと思いますが、代表的なものは上記のものです。
②のリウマチ熱は、上記に書きましたように歯ではなく扁桃腺による感染の方が強いです。
他は、神経にも影響があることも分かりますし、心臓や腎臓も血液にも関わりがあることが分かります。
⑦の皮膚炎はなんだろうかと筆者は謎ですが、皮膚にも影響があるのですね。
虫歯や歯周病を放置しますとどうなるかお分かりいただけたでしょうか?